光のもとでⅠ
 何度も違うって自分に言い聞かせて、違う場所をいくつも探して、信じられないくらい楽しい毎日を過ごして、人と言葉を交わすたびにそれが全部宝物になっていくのにっ――。
「それ、手伝うから……」
「え……?」
「条件反射、パブロフの犬。翠は犬になればいい。もしくは、恐ろしく品質の悪い機械。俺が何度でも上書きしてやる。壊れるたびにリカバリーしてやる。保障期間は俺が死ぬまで半永久的に」
 涙が零れる。
 急いでハンカチをポケットから出したけれど、それはあまりにも湿りすぎていてくたびれた状態だった。
「ほら」
 目の前に縁取りが濃紺のブルーのハンカチを差し出された。
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