光のもとでⅠ
「翠葉って子は本当にそういう子で、何か一捻りして試練じみたものを与えないとだめなんだよね。そのあたり、俺とそっくりで本当に困るよ」
 かわいくて仕方ない、そんな口調だった。
「で、秋斗くんは一癖ある娘に何を課したのかな?」
 表情も目の色も声音すら変えずに訊かれる。
「……自分の恋人に戻るように、と。そう言いました。病室を十階へ移すことで軟禁状態にもなる。それを彼女に強要しました。ただ、そんな状況を作ったとしても、自分がいつもどおりでは意味がないと思っていたので、彼女には冷たく接し、不意打ちでキスもしました。翠葉ちゃんは私にそういうことをされることに恐怖心を持っていましたから」
「なるほどね、それで静が慌てて監視カメラをつけるとかそういうくだりになるんだ。納得」
「でもっ――長期にわたってとかそういうつもりはなくて、一週間もしたら解放するつもりでいたんです」
 本当に、少しの時間で良かったんだ……。
< 3,733 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop