光のもとでⅠ
「あぁ、固まってる固まってる」
 そりゃ固まるでしょう……。
 思わず残りのポカリを一気飲みした。
「あの、すみません……。それ、切に希望なんですが……。でも、本当にそれでいいんですか?」
「翠葉が望みさえすればね」
 それはそうだ……。
「でも、結婚っていう方法を取らなくても世話はしてもらえるしねぇ」
 それでも別にいいんだけど――と思う俺は性根が腐っているかもしれない。
「嘘だよ。俺はさ、翠葉が笑っていてくれればそれでいいんだ。ただ、笑うためには泣くことも知らないとね。幸せっていうのは、つらいことを知っていれば小さなものでも大きな幸せに変換できるんだよ。俺は翠葉にそういう子になってもらいたい」
 親が自分の子に望むもの? 求めるもの?
「挫折って悪くないよ。絶対に次につなげられるじゃん。それに、自分の娘だからね。それくらいはできるって信じてるんだ」
 子どもに絶大な信頼を寄せているというのはこういうことを言うのだろうか。
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