光のもとでⅠ
 期待というよりは信頼。
 羨ましいくらいの親子関係。
 翠葉ちゃんや蒼樹がどうしてああいう人間に育ったのか、少しわかった気がした。
 子育てにおいて、何が正しく何が間違いというのはないのかもしれない。
 翠葉ちゃんは確かに世間知らずだけれど、それでもいい子だと思うし、蒼樹はシスコンすぎるとは思うものの、それを不快には感じない。
 藤宮以外の家の中を初めて知った気がした。
「あぁ、そろそろ時間か……」
 零樹さんの腕時計が鳴った。
「秋斗くん、ここまで来てくれてありがとう。君と話しができて良かったよ」
 手を差し出された。
 咄嗟にその手を握る。
「翠葉とは先日会ったばかりなんだけどさ、すでに翠葉欠乏症なんだよね。誰かとみっちり翠葉の話をしたかったんだ」
 は……?
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