光のもとでⅠ
 私には到底理解ができない。
 他人事だけど、よその家のことだけど、私は碧さんとそんなお粗末な付き合いをしてきたつもりはないっ。
「……美波さん、申し訳ないんですが、帰っていただけますか?」
 蒼樹くんは静かに、私から母親を守るようにそう告げた。
「……本当によく出来た息子よね?」
 本当は心配しているのに、それも言えない自分が嫌……。
 この子は碧さんを病院へ連れていってくれるだろうか。
 私にはできなくてもこの子ならできるだろうか。
 そんな思いが頭をよぎる。
「マンションにいた際、美波さんにはお世話になりました。本当に感謝しています。でも、うちのことをそんなふうに言われる義理はありません。さきほど母が申しましたように、うちにはうちの事情があります。それを他人のあなたにとやかく言われる筋合いはない」
「世話になったって言う割にはずいぶんな言いようね?」
 こんなこと言うつもりなかった。
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