光のもとでⅠ
 碧さんの姿を見るまでは怒りに心が支配されていたと思う。
 でも、碧さんの姿を見てからは碧さんの身体が心配で仕方なかった。
 その思いに反して、碧さんは自分の体調を省みず、娘のことを気にしているくせに家には帰らない。 
 その状況すべてに納得がいかなかっただけ……。
「恩人ならどんなことにでも口を出してもかまわないのでしょうか……」
 蒼樹くんの影にいたきれいな子が口を開く。
 でも、あなたの出る幕でもない。
「あなたこそ部外者でしょう?」
「目上の方に失礼かとは存じますが、あなたもまた部外者、ですよね?」
 この子は頭が切れる。
 もしかしたら、蒼樹くんが幸倉へ連れていこうとしても、先に病院へ連れて行くように進言してくれるかもしれない。
 そう思うくらい、私の目を真っ直ぐに見て言葉を発していた。
「何を言っても無駄ね」
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