光のもとでⅠ
 私がまだ玄関にいると思って話しかけているのだろうか。
 碧さんはとくに大きな声で話すでもなく、ドアに向かって普通に話しているようだった。
 さっきは翠葉ちゃんの姿に気を取られていて、碧さんまでは気が回らなかった。
「翠葉の話も、私の話も、聞いてもらえないかしら?」
 碧さんは少しずつ、言葉を選びながら口にしているようだった。
 玄関を開けると、困ったように笑った碧さんが立っていた。
「先日はごめんなさいね」
 それこそ、こんな玄関先で話す話じゃない。
「中へ入ってください」
「……いいの?」
「だめだったら入れません」
 ……私、かわいくないなぁ。
 碧さんにはすごくかわいがってもらってきたのに……。
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