光のもとでⅠ
 廊下の先を歩く碧さんは痩せてしまったものの、憔悴しきっている感じではない。
 手軽に出せるものは冷蔵庫に入っているアセロラジュースくらい。
 グラスに入れて持っていくと、
「ありがとう」
 碧さんはグラスを受け取り、美味しそうに一口飲んだ。
「私ね、美波ちゃんに話していないことがあるの」
 すぐに口火を切った。
 こういう潔さが碧さんの持ち味だと思う。
「長い付き合いになるし、子どもの話もたくさんしてきたけれど、翠葉の病状についてはあまり話したことなかったわよね?」
 私は頷く。
 口を挟まず静かに聞こうと思った。
< 3,763 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop