光のもとでⅠ
 ただ、もうひとつ理由をあげるとするなら、これ以上、あの男を目に入れないようにするためでもあった。
 いつどんなときも、目について姿を追ってしまう自分も嫌だった。
 中等部三年の一年間、冷却期間を自分に設けることができたのは幸い。
 学年が同じじゃなくて本当に良かったと思う。
 あの男は絶対に振り向いたりなどしない。私のことを見てくれることなどない――あの男を諦めるための一年だった。
「私、中等部の頃、藤宮司が好きだったんです」
 この際だからカミングアウトしておく。
 だって、過去のことだし……。
「え……?」
 蒼樹さんは歩みを止めて、表情をフリーズさせた。
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