光のもとでⅠ
 蒼樹さんは過去の恋愛など気にしないと思っていた。
 気にするとしたら私だけだと思っていたのだ。
 もしかして、私が気にしているかもしれないと思って言ってくれたのかしら?
「単に俺が知りたいだけなんだけど……」
 やだっ、私、顔に出てた!?
 蒼樹さんはクスクスと笑い、
「こんなことが気になるなんてね。自分でも意外だと思ってる。……じゃ、またね」
 そう言って軽やかに走り出した。
 その背中を見て思う。
 どんどん遠くなるけれど、あの男を好きだったときに感じたものとは違う。
 不安なんてない。胸が締め付けられるような寂しさは感じない。
 だから、私は今幸せだと思えるし、あのままあの男を好きじゃなくて良かったと思う。
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