光のもとでⅠ
「私は意外だった。あの男がついていながら宿題に手をつけてないなんて」
 無駄に頭いいんだから、その辺忘れてるんじゃないわよ、というのが正直な気持ち。
 今となっては好きも何もあったものではない。
「うーん……なんだか色々ありすぎて……」
「その色々を訊こうじゃないのよ」
 苦笑して答える翠葉ににこりと笑みを向ける。
 でも、この話はまた先延ばしかしらね。
 次々と教室に入ってくるクラスメイトは誰もが翠葉の存在に気づき、窓際へとやってくる。
 それも仕方のないことだろう。
 夏休み中、何度となくクラスの人間から連絡が入っていた。
「お見舞いに行きたい」と。
 けれど、それが出来る状態にはなかったので、「ご家族の方に遠慮してくださいって言われてるの」と例外なく答えてきた。
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