光のもとでⅠ
 電話をしようか迷って、かける言葉が見つからなかったからやめた。
 それに、あの男はそんなことは望んでいないと思ったから。
 蒼樹さんから、翠葉は秋斗先生とも会い、四月からの出来事をすべて聞いたことも知っている。
 そのときも、一度取り乱したり倒れたりしたようだけれど、今、目の前にいる翠葉はとても普通に見える。
 普通に――楽しそうにクラスの人間とお菓子の話をしている。
 以前のように申し訳なさそうな笑顔も見られない。
「翠葉ーーーっっっ! 翠葉翠葉翠葉翠葉翠葉っっっ!」
 あ、来たわね?
 飛鳥、待ってたのよ。
 これで翠葉の反応が見られるだろう。
 飛鳥が器用に机を避けながら翠葉地点へ到達すると、すかさず海斗が間に入った。
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