光のもとでⅠ
「朝、ホームルーム前にも話したのだけど、私の体調はまだいつもの状態まで回復していなくて――」
 突然のことにどこから話をしたらいいのかがわからないのだろう。
 視線を少し落とし、言葉を探しているのがわかる。
「前に話したことのある症状以外にも全身に痛みがあって、夏休みに集中して治療を受けてきたから耐えられなくはないのだけど、肩を叩かれたり、人とぶつかったり、身体に衝撃があるのは少しつらくて……。でも、それ以外はなんともないので――」
 なので……?
 きっとこの先は言えないだろう……。
 でも、翠葉、だから何? 何も変わらないわよ。
「そっか、それで私は海斗に止められちゃったんだ?」
 飛鳥が翠葉を見上げると、海斗が苦笑を浮かべて飛鳥の方を向いた。
「そうそう、飛鳥はイノシシ並みだったからさ」
 ほら、何も変わらないでしょう?
 みんなの視線は翠葉に集っていて、その視線に絡まれたかのように翠葉は動けなくなっていた。
 でも、そこまで言えれば十分。
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