光のもとでⅠ
「ツカサ先輩に戻したほうがいいのかな?」
 ふざけるな……。
 歩く速度に感情が反映される。
「ちょっと待ってっ! 足の長さが違うんだからそのあたり考慮してよっ」
 きっと名前の呼び方が戻ったとしても、こういう話し方までがもとに戻るとは思わない。
 それくらいには近づけたと思っている。
 でも――もう、これ以上距離が開くのは嫌なんだ。
 テラスに出るガラス戸の前に立ち、失敗したと思う。
 ガラス戸の向こうにゆらりと立ち上がる陽炎の様から、外の暑さをうかがい知ることができた。
 人が全くいないことからしても、テラスは相当暑いに違いない。
 ガラス戸に背を向けると、翠が「ん?」と不思議そうに俺を見る。
「何?」
「ルート間違えた」
「え?」
「いいから、こっち……」
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