光のもとでⅠ
 来た道を戻り、校内の階段まで来ると、翠は片手にかばんを持ち、もう片方の手は手すりに沿わせてゆっくりと階段を下りる。
 一歩一歩確かめるように、一歩一歩粗雑にならないように。
 自分に返ってくる振動が極力小さく済むように……。
 校内には各校舎の両端にエレベーターがある。
 ひとつは運搬用で少し広めのもの。
 そしてもうひとつは標準的なエレベーター。
 けど、それらは学校からエレベーター使用許可が下りないと使うことはできない。
 翠は申請していないのだろう。
 知ってはいるのだろうか……。
 いや、姉さんがついているのだからそのくらいの情報は得ていてもおかしくない。
 だとしたら、これが翠の選択。
 集団の中で浮かないように、特別扱いの枠に入らないように――。
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