光のもとでⅠ
「何か用?」
 ここしばらく、こんな呼び止められ方をすることはなかった。
「夏休みに毎日図書館でデートしてたって、すごい噂……。あれ、本当なの?」
「その場を見ていた人間がいるなら、デートとは思わないはずだけど? それに毎日じゃない」
 急に呼び止められてそんなことを話すいわれはない。
 第一、毎日ってなんだよ……。
 あんなバカに毎日会っていたらこっちの頭まで腐る……。
「でも、確かめた人なんていないし……。噂、すごく広まっているし……」
 あぁ、どっかで見たことあるな、この顔……。
 確か中等部のとき一緒のクラスになった気がしなくもない。
 その程度の認識しかない人間に、なんでこんなことを訊かれなくちゃいけないんだか……。
「噂をいちいち確認しに来られるの迷惑。でも……何をどう思われてもかまわないけど、アレだけは噂で勘違いされるのも不愉快だ」
 女子五人、避けるのも面倒で真ん中を突っ切った。
< 3,866 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop