光のもとでⅠ
 エレベーターが上昇を始めたとき、翠が口を開いた。
 言おうかどうしようか――そんな感情は、狭い箱の中だとよりいっそう濃厚に感じる。
「さっきの先輩たちは知りたかっただけだと思うよ? ……普通に、期間限定家庭教師、って教えてあげたら良かったのに……」
 なんでその話……?
「……翠、課題テストや全国模試の準備できてる? もしできてないなら、俺が面倒見ようか?」
 笑みを添えれば、「スミマセン」と謝った。
 なら、最初から口にするな……。

 図書室には誰もいない。
 たぶん優太辺りが茜先輩たちにも連絡したのだろう。
 少し遅れていこうとかなんとか……。
 漣はもともと遅刻魔だし……。
< 3,868 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop