光のもとでⅠ
 図書室に置きっぱなしになっているノートパソコンを立ち上げていると、奥の仕事部屋から秋兄が出てきた。
「翠葉ちゃん、こんにちは」
「こんにちは」
「体調は大丈夫?」
「はい。秋斗さんはこれからお出かけですか?」
 手にはアタッシュケースとスーツの上着。
 本社で会議か……。
「これから本社で会議があるんだ。それさえなければ翠葉ちゃんをお茶に誘うんだけどね」
 声だけでわかる。
 翠仕様の笑顔で話しているであろうことが。
 ちらりと翠を見ても、顔を赤らめてはいなかった。
 意外……。
 あの笑顔には弱かったはずなのに。
 あぁ、違う……。
 ほかに意識が逸れているんだ。
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