光のもとでⅠ
 頭を下げるだけならいい。
 心臓と頭が同じ位置になるのなら問題はない。
 そのあと、心臓よりも高い位置に頭を戻すと、軽い脳貧血の状態になる。
 それは、翠が眩暈を起こすパターンの第一だ。
 体位を簡単に変えるな、と何度言ったらわかるんだか……。
「……えと、座って土下座……?」
 振り返るとかではなく、真上を見て俺を確認。
 きょとんとした顔は間抜けだが、髪が――髪が全部背中側へ流れ、顔の輪郭が露になる。
 首筋の延長にあるIVHの痕や鎖骨のくぼみが見えて心臓が止まるかと思った。
「……暑さで頭に虫がわいてるんじゃないか?」
 苦し紛れのタイミング。
「それ、どういう意味?」
 俺の視界に何が映っているのかすら気づかず、翠はその姿勢のまま質問してくる。
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