光のもとでⅠ
 一度目を閉じ、翠と視線を合わせることに意識して目を開いた。
「……立っている状態で頭下げて頭上げたらどうなる?」
 自分の言葉に少し冷静さを取り戻す。
 翠は俺の目をじっと見て、五秒くらいかけてから、
「……ごめんなさい。あと、ありがとう」
「どういたしまして」
 翠から手を離し、背を向ける。
 自分のもといた席に戻るまで数歩しかない。
 それまでにどうにかしたいこの心臓――。
 顔なんて病院で毎日見ていた。
 IVHをしているところだって見てきた。
 それを引き抜くときも側にいた。
 なのに、制服を着ているというだけでどうしてこんなに心臓が騒ぐっ!?
 別に変な意識をしたわけじゃない。
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