光のもとでⅠ
「行かないで――」
 思わず口にしてしまった言葉。
「……え?」
 言ってすぐに後悔した。
 でも、口にした言葉を取り消すことなどできはしない。
「翠葉ちゃん?」
「あのっ……私、すぐに寝てしまうので……だから、それまででいいから……この部屋にいてほしいです」
「翠葉ちゃんがいいって言うならずっといるよ」
 と、すぐ近くに来てくれた。
「だからおやすみ……」
 額に降ってきたのは優しいキス。
 いつもならあたふたしちゃうのに、どうしてか、今はその行為にひどく安堵した。
 私はそれから数分と経たないうちに眠りに落ちた。

 私はどうしたいんだろう……。
 もう答えは出したのに、どうしてこんなにもすっきりとしないのか。
 どうして、こんなにあとを引き摺らなくちゃいけないのか。
 側にはいられないって言ったくせに、どうして側にいてほしいと思うのだろう。
 側にいたいと思うのに、どうして側にいられると困るんだろう。
 自分が自分じゃないみたい。
 恋なんてしなければ良かった。恋なんて、知らなければ良かった――。
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