光のもとでⅠ
 マスをいくつか戻るとかの問題ではなく、振り出しに戻ってないか!?
「……『友達』っていうのはどこへいったわけ?」
 苦し紛れ――いや、最後の悪あがき、かな。
「どこにもいかないよ。ツカサは友達でしょう?」
 翠にとって、名前の呼び方にそんな大きな意味はないのかもしれない。
 俺だって、ここまで拘る自分はおかしいと思う。
 それでも――俺には拘れるものが少ない。
 これしかないんだ……。
 だから譲れない。
 真正面から脅すように見ても、翠は怯まない。
 だいたいにして、翠を脅してどうする……。
 少しでも気分を変えたくて、一呼吸しようと思ったのに、息を吸うどころか出てきたのはため息だった。
「これ」と、今取ってきたばかりのボールペンを差し出せば、翠は両手で受け取り、「ボールペン?」と訊かれる。
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