光のもとでⅠ
「ねぇ、翠葉ちゃん。あれの機嫌なんとかならない?」
「不機嫌モード炸裂で近寄ろうにも近づけないんだよね」
 声だけならまだしも、こそこそとこっちを見ている気配。
 そんな中、やけに真っ直ぐな視線がひとつ――翠だ。
「……迷惑極まりないですよね」
 賞状からは目を放さず、
「翠、聞こえてるけど?」
「地獄耳」
 ずいぶん言うようになった。
 ムカつくけど嫌じゃない。
「どうかしましたか?」
 俺に訊いた感じはしなかったから、きっと嵐や優太が固まっていたのだろう。
「いや、翠葉ちゃんって司に対しては結構ポンポン言うんだなって……」
「うんうん、私もちょっとびっくりした」
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