光のもとでⅠ
「何があった?」
「……秋斗さん、怒らせちゃった」
「……は?」
 優しい顔をしていたのに、一気に目が点になる。
「秋斗さん、怒らせちゃった……どうしようっ」
「翠葉、それだけじゃ状況がわからない」
「……雅さんに会ったことを話さなかったのもいけなかったみたい。でも、雅さんの助言をもとに断ったことが一番の理由みたい。でも、自分で考えたんですって話したら……」
「話したら?」
「もっと怒られた。……というよりは脱力してたと思う。でも、理由がわからなくて……」
「ちょっと待て。何かすっ飛ばしてないか?」
 何か……?
「…………秋斗さんにはもっと似合う人がいると思うって言ったらすごく怒られた。……ねぇ、どうして? ちゃんと考えて口にしたことなのに」
 蒼兄は大きなため息をついた。そして曖昧に笑う。
「それはねぇ……正しくは怒ったんじゃなくてショックだったんだと思うよ」
「……どうして?」
「……翠葉がわかりやすいたとえ話をしようか。翠葉がすごく欲しい花があるとする。翠葉はその赤い花が欲しくて欲しくて仕方ないんだ。で、その赤い花も翠葉のことが大好きなんだ。できれば翠葉に育ててもらいたいと思ってる。でも、その赤い花は一年草で翌年には咲くことができない。だから、赤い花は翠葉に言うんだ。私じゃなくてあっちの黄色い花は宿根草だから、翠葉さんはあっちの黄色い花が似合います。私じゃなくてあっちの黄色い花を持ち帰ってください、って」
 一年草の赤いお花と宿根草の黄色いお花……。
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