光のもとでⅠ
 心配だから来た、と秋兄ならそう言うのだろう。
 もしくは、ついていたかったからついていた、と。
 俺には言えない言葉の数々。
 ここでこんなふうに話すのは久しぶりだ。
 翠が退院し、二学期が始まってからすでに一ヶ月。
 当たり前といったら当たり前のことなのに、夏休みという期間、あまりにも当然のようにここへ通ってきていたからなのか、この場所が妙に心落ち着く場所となっていた。
 いや、翠とのこの距離やポジションに、かな。
 翠の真っ直ぐな視線を感じ、何か話さなくては、と思う。
「数日休んだら?」
 俺は口を開いて早々に地雷を踏んだらしい。
 翠の大きな目から涙がボロボロと零れる。
 でも――。
「また入院するのは嫌だろ?」
 翠が学校を休まずに通いたいのはわかっているし、つらくてもがんばって登校しているのも知っている。
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