光のもとでⅠ
「でも、それに似たことならしようとしてたんじゃないでしょうか」
 このまま話していたら自虐的になりそうだ。
「俺のことを先輩つきの呼び名に戻そうとした時点で――」
 最後まで言う前に、茜先輩の鋭い一言が飛んできた。
「それが何……?」
 珍しく、ひどく冷めた声だと思った。
 いつもより低く、何かを堪えているような声。
「司は呼称に執着したけれど、たぶん、翠葉ちゃんはそんなことどうでも良かったのよ」
 これ以上この話を聞いていたら頭に血が上りそうだ。
 そんな自分は嫌だし、人に見せるなんて真っ平ごめんだ。
「先輩、かばんを返してください」
 歩みを止め言う。
「嫌よ」
 茜先輩は俺にかまわず校門へ向かって足を速める。
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