光のもとでⅠ
「……失礼ね、歌姫からの神託よ?」
「姫は姫であって神じゃありませんけど……」
「少しはいつもの司に戻ったかな?」
 茜先輩がくすりと笑う。
「私が言えること。それはね、翠葉ちゃんは司から離れるなんて考えはなかったんじゃないかな、ってこと。司と距離を置くつもりなんて考えもしなかったと思う」
 距離――離れる……。
「今の関係でいるためなら呼び方を変えることなんてとてもちっぽけなことだったのよ。呼び出しに応じて一生懸命司のことを説明するのも、司っていう人間を知ってほしいから。自分って人間を知ってほしいから。ただそれだけなんだと思うの」
 俺は――呼称にしか執着するものがなくて、呼び方が変わるだけで距離ができてしまうものだと思っていた。
 しかも、第三者――なんの関係もない人間に言われるがまま呼び方をかえられたことにえらく腹が立った。
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