光のもとでⅠ
 でも、今このタイミングで言うかっ!?
「好き」とか「大好き」とか、さらっと言うな。
 俺が言いたくてなかなか言えない言葉をさらっと言ってくれるな。
 しかも、俺の「好き」と翠の「好き」は意味合いが違いすぎてムカつく。
 ファンの好きとは違うといったけれど、俺の感情とも違うんだ。
 ただ、人として好き――そういうことなのだろう。
「俺、翠の言動でどのくらい寿命が縮まるんだろう……」

 キッチンから出ると、茜先輩と翠が部屋の音響について話していた。
 ここはもともと音楽サロンみたいなつくりになっている。
 単に防音が施されているのとはわけが違う。
 通常、防音室というのは音の響きを吸音させ、残響をカットするものが主流だが、ここはピアノ以外の楽器でも対応できるようになっている。
 たとえば声楽をする人がいても、きちんと声が響く仕様になっているのだ。
< 4,110 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop