光のもとでⅠ
 そのあと、忘れ去られていたお茶を飲むことになる。
 黄緑色の液体だったものは時間を置いて茶色く退色している。
 先輩はソファに腰掛け、翠は定位置のラグに座る。
 翠は耐熱ガラスのカップを嬉しそうに両手で持ち、冷めたお茶を美味しそうに口にした。
「ふたりとも、今日はちゃんと歌詞に気持ちがのってたね?」
 気持ちがこもっていたというか――。
 感情移入、仮想現実、そんな感じかもしれない。
 海斗と佐野、本当にふざけるな……。
「……歌詞、いつもは読むだけで想像が追いつかなかったんです」
 翠がとんぼ玉をいじりながら答える。
「今日は想像が追いついたの?」
「はい、少しだけ……」
 翠ははにかんで答えた。
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