光のもとでⅠ
 傍目に見た俺たちには、絶対に悪魔の触覚とか尻尾が生えて見えると思う。
「あの藤宮先輩にシャウトさせるのは至難の業じゃないっすか」
「あぁ、確かに……」
 今現在、取り付く島のない男こと、藤宮司。
 司には色々とこなしてもらわなくてはいけないことがある。
 が、やつは全然乗り気ではない。
 歌の練習に何度となく付き合ってきたものの、音程や歌がどうこう以前に気持ちがこもっていない。
 司のためだけに選曲されたようなものなのになぁ……。
 そして、今日はいつもに増して不機嫌ときた。
 昨日、病院に運ばれた翠葉ちゃんは休み。
 だからなのか、なんなのか――。
 なんていうか、翠葉ちゃんがいないと本当に取り付く島がなくて困る。
< 4,124 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop