光のもとでⅠ
「お互い、懐柔し甲斐のある同級生がいると苦労しますよね」
 苦労しますよね、なんて言いながら、表情はそれに伴っていない。
「どっちかっていうと、攻略し甲斐あるって顔してるけど?」
「あー、それ間違ってません。御園生が笑うと嬉しいし、何か話してくれるとしてやったり、って思うし。恋愛対象じゃないけど、妙に一喜一憂させられる相手なんですよ」
 そう言って笑う。
「俺の場合はさぁ、対象が女の子じゃなくて男なんだよね。でも、気持ちはわからなくはない。司の表情が豊かになったと思えば、心境は若干親心に近いものが……」
 そんな話をしていると、ピーっ、と笛が鳴り、「休憩終わり」という声が聞こえてきた。
「すんません。じゃ、俺練習に戻ります」
 佐野くんはスプリンターらしい足のバネでフィールドへ下りていった。
 あれは後輩っていうよりも、
「同士、かな……?」

 佐野くんの走りを一本みてから図書棟へ戻った。
 そこには不機嫌大魔王の姿と茜先輩の姿がない。
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