光のもとでⅠ
 入り口から続く南側の壁に設けてある神棚の正面に立ち、どちらともなく礼をする。
 道場と名のつく場所にはたいてい神棚があり、道場に入ったときと出るときに礼をするのは当たり前のこと。
「で、なんなんですか」
「いや、茜が司と恋バナしたっていうから俺もしにきただけ」
 は……?
「ある意味、茜に悶絶嫉妬中」
 意味がわからない。
「俺だって司と仲良くしたいんだよ」
 会長は少しふてくされた顔をして、道場の端に積まれたマットに身を投げた。
「俺が自分の恋愛話をしたら司もしてくれんの?」
「……会長の恋愛話って茜先輩のことじゃないですか」
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