光のもとでⅠ
 会長に対するものは、そこらの男にする返事とさほど変わらない。
「好き」「かわいい」と言われても、「ありがとう」と笑顔で返すのみ。
「中三の卒業式から高一の夏前くらいまで、付き合ってたんだ。でも、家に邪魔された」
 会長が口にする「家」――それは「加納家」ということだろう。
「司のところも同じかもしれないけど、うちも『家柄』に拘る家だからさ。……俺はそんなのどうでもいいのにね。親戚の簾条がやたらめったらそういうことを気にするものだから、それに引き摺られちゃってる感じ。すごい迷惑だ」
 会長は「あぁ、やだやだ」と手脚をばたつかせる。
 簾条家の後継者問題は少し前から不穏な空気が漂っている。
 簾条の姉が家出をしてからずっとだ。
 もう何年になるだろうか。
 そんな加納や簾条の家に対し、茜先輩の家も色々と事情が複雑だ。
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