光のもとでⅠ
 会長と茜先輩ほどの距離であっても、側にいて見ているだけではわからないことがあるんだな。
 話をしないと、してくれないと――。
 ……そういえば、その頃だったか?
 茜先輩がわざわざ中等部に寄り、俺を待ち伏せていたのは。
 突拍子もない、という言葉がひどくしっくりくる状況に悩んだのは数十秒。
 言葉が返ってくることを望まない話だと判断した。
 時間の無駄、面倒、という思いはあったけど、そう長くかかるものではないだろうという判断しその場に留まった。
 詳細に覚えているわけではない。けれど、あのとき茜先輩が悩んでいるようには見えなかったし、苦しんでいるようにも見えなかった。
 それは、あのときの俺だったからこそ感情の機微に気づけなかったのだろうか。
 今の俺ならもう少し違う見解があったのか……?
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