光のもとでⅠ
「秋兄はもうそんなことはできないと思う。秋兄はそんなに強い人間でもひどい人間でもない。大切な相手を傷つけたら誰だって多少なりとも変わる」
 根拠はそれだけ。
 今まではそんなことすら理解できなかったと思う。
 でも、「大切な存在」ができれば想像に易い。
「はい、質問」
 朝陽が簾条と俺の間に座り手を上げる。
「何」
 朝っぱらから尋問受けてる気分。
「翠葉ちゃんにそれっぽいこと言ってるって何を言ったの? それでどうしてあの子が気づかないわけ?」
 そんなの俺が知りたい。
「具体的に好きだと言ったことはない。けど、必要だとは伝えているし、代わりがないとも言ってる」
「……なーんだ、それだけ」
 朝陽の落胆した顔に殺意を覚える。
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