光のもとでⅠ
 俺にはそれを言うのが精一杯だというのに。
「好きって言っちゃえばいいのに」
 会長と一緒で芝生に座る優太に言われた。
「……言って困らせたくはない」
 だから言えない……。
「なんで困るのよ……」
 簾条に訊かれ、俺は渋々口を開く。
「……翠は秋兄を好きだから」
 記憶をなくす前、翠は間違いなく秋兄を好きだった。
 ふたりは両思いだった。
 雅さんという邪魔が入らなければ、なんの問題もなく付き合い始めていたはずだ。
 あの頃から問題なくずっと付き合ってきていたら、秋兄のことだ――早々に婚約まで話を進めていたと思う。
 それができなかったのは、雅さんがいらぬ知識を翠に吹き込んだことと、翠自信の体調不良――。
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