光のもとでⅠ
翠が許容できなくなったから記憶を手放した。
それで一時的に負担が軽くなったとは思う。
けれど、今は――?
今は逆に、なくした記憶がネックになって、大きなストレスとなっている気がする。
記憶をなくした直後のパニックぶりは当たり前のこととして、そのあと、少し落ち着いたように見えた。
秋兄と会わせて四月からの出来事を話したときも、思ったよりは冷静に聞いていたと思う。
しかし、そのあとは思い出そうと躍起になり始めた。
それにストップをかければ、素直に従ったふうにも見えなくはない。
けど、たぶん翠は思い出すことに必死だ。
周りには話さないけれど、いつだって記憶の片鱗を捜し求めている。
「藤宮司、ひとつ言っておくわ。今の翠葉は秋斗先生を好きじゃないわよ」
簾条の声が思考にひびを入れる。
それで一時的に負担が軽くなったとは思う。
けれど、今は――?
今は逆に、なくした記憶がネックになって、大きなストレスとなっている気がする。
記憶をなくした直後のパニックぶりは当たり前のこととして、そのあと、少し落ち着いたように見えた。
秋兄と会わせて四月からの出来事を話したときも、思ったよりは冷静に聞いていたと思う。
しかし、そのあとは思い出そうと躍起になり始めた。
それにストップをかければ、素直に従ったふうにも見えなくはない。
けど、たぶん翠は思い出すことに必死だ。
周りには話さないけれど、いつだって記憶の片鱗を捜し求めている。
「藤宮司、ひとつ言っておくわ。今の翠葉は秋斗先生を好きじゃないわよ」
簾条の声が思考にひびを入れる。