光のもとでⅠ
 昨日、たかだかあれだけの会話をしただけなのに、俺は妙に落ち着いてしまって、何を焦り、何を不安に思っていたのかすら霧の中。
 体調が心配なことに変わりはない。
 でも、俺が側にいて俺が何をしてやれるわけでもなく、医師であり、どんな場所であっても処置をできるスキルを持つ昇さんが同行しているのだから問題はない。
 物理的な距離があったとしても、それは俺と翠の気持ちの距離には直結しない。
 きっと今までなら、この状況だけで良かったのかもしれない。
 翠の中に俺という譲れない存在ができあがるだけで満足できたのだろう。
 でも、今はそれ以上を求めている。
 今は異性として自分を見てほしい――。
「翠は男に対して恐怖心を持っている部分があるから……」
 だから、「好き」という気持ちを伝えることで、俺を「異性」と認識させることに躊躇する。
 もし、「異性」を感じないからこそ得られている今のポジションなのだとしたら、それを失ったとき、自分がどうなるのかがわからない。
「だから好きって言えない?」
 朝陽に訊かれる。
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