光のもとでⅠ
 歯止めが利かなくてキスして、キスマークをつけて抱きしめて――。
「秋斗、同じ轍を踏まなきゃいいだけのことだ」
「……踏みそうなんですよ」
「ずいぶん苦戦してんな」
「えぇ……」
「ま、がんばれ寂しき独り者」
「昇さん……そこ、がんばれ青年とか若者とかの間違いじゃなくて?」
「二十後半と三十前半なんてそう変わんねーよ。ってことでとっとと休め」
 そう言うと、窓の閉まる音がした。
「同じ轍、ねぇ……」
 呟きながら部屋に入り、渡された薬を飲みすぐにベッドへ横になる。
 目を瞑ればここに彼女が横になっていた日を思い出す。
 誕生日のランチをうちで食べたあと、アルバムのトラップにはまってまんまとこの部屋に足を踏み入れた彼女。
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