光のもとでⅠ
 そのままの俺――。
 そのままの俺ではだめな気がする。
 そのままの俺なら、彼女に触れずにはいられない。
 記憶の話をしたとき、手を握ることは許された。
 そこから、とは思っていても、手を差し出すその瞬間が怖い。
 あのときは司もいたし、「お相子」な感じもした。
 もし、手を差し出して困った顔をされたら?
 いつかのように、男性恐怖症のような症状が出たら?
 楽しい旅行にしてあげたいと思うのに、それを自分が台無しにしてしまいそうだ。

 栞ちゃんたちの部屋はエグゼクティブ。翠葉ちゃんたちが泊まる部屋はロイヤルスイート。俺は普通のデラックスツイン。
 デラックスの下がないから俺はそれにしたわけだけど、栞ちゃんたちの部屋は式を挙げたときに泊まった部屋を取ることができた。
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