光のもとでⅠ
 けれど、あいつは何度となく俺の擁護やフォローをしてくれた。
 彼女の記憶がなくなったときだって、自分はインターハイ前だというのに、俺が引きこもって仕事一辺倒にならないように弓道場へ引っ張り出す口実を作ってくれた。
 行方をくらましたときには見つけ出し叱り飛ばしてくれた。
 その後、俺のわがまま――「久しぶりの夏休み」にも付き合ってくれ、さらには彼女に引き合わせてくれた。
 それらすべては彼女のためだったのかもしれない。
 でも、引き合わせないことで彼女の世界を自分のものにするいい機会でもあったはずなのに。
 どこまでもフェアじゃないのは俺のほうだ。

 何もしていないとろくでもないことばかりを考える。
 時計を見れば七時四十分。
 そろそろ彼女たちが降りてくるころだろう。
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