光のもとでⅠ
 その後ろ姿を見ていると、
「何緊張してんだか。柄じゃないでしょ?」
 若槻に言われる。
「おまえねぇ……一度ちゃんとした恋をしたほうがいいと思うよ」
 そしたらこんなことは言えまい。
「大変申し訳ないのですが、俺、遊びじゃない筋金入りの純愛経験者ですから」
 は……?
「秋斗さんとは違うよ。俺の片思い歴は秋斗さんの比じゃないから。――っはよーございます!」
 若槻はコンシェルジュに挨拶をしてエントランスを出ていった。
「何それ、俺初耳なんだけど……」
 自分の車にハープを積むと、蒼樹の車の後ろに栞ちゃんたちも集っていた。
「気にするな。こちとらタダで泊らせてもらえるなんて光栄な限り」
 今回は俺と翠葉ちゃんのフリーパスをフル活用。
 宿泊料、その他が無料。
 こういう私的目的で使うのは二度目になる。
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