光のもとでⅠ
 君はこれからそんな金額を超える収入を得るようになるんだけどな……。
 それでもきっと、彼女の中にある価値観は決して変わることはないのだろう。
「さ、そろそろ行こう」
 彼女を促し助手席のドアを開けると、見知った車が滑り込んできた。
「蔵元……?」
 確かに、今日の出発の時間は話してあったが、まさか見送りに来たわけではないだろう。
 車を降りた蔵元の手にはブリーフケースがあった。
「秋斗様、こちらの書類にサイン漏れがひとつございます」
 その書類に目を通し脱力する。
「そのくらいどうにでもなるだろ」
 明日が期日の書類で、ほかのヶ所はとくに問題はない。
 ただ、あるべき場所に俺のサインがないだけ。
 蔵元から渡された少し重みのある独特な万年筆でサインをする。
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