光のもとでⅠ
 最後に全部を見回してから結局は出入り口に一番近い場所にあった赤いケトルを選んだ。
 そして、いそいそと閉まっているドアへ向かう。
「くっ、そうか……あのドアの向こうが気になって仕方なかったんだ」
 彼女が座っていた位置からすると、真正面にあのドアが見えていたはずだ。
 そんなことがおかしくてつい口元が緩む。
 今頃、あっちの部屋は彼女の観察対象になっているだろう。
 ケトルに水を入れるだけにしては十分すぎるほどの時間をかけて彼女が戻ってきた。
 俺はストーブに火を入れたところ。
「まだ寒くないからね。入り口のこのストープでいいかな?」
「はい」
「じゃ、ランチにしよう」
「はい!」
 味覚は君の記憶に何かしらの刺激を与えるだろうか。
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