光のもとでⅠ
 それまでの会話を全部スクリーニングにかけてみるものの、これといって思い当たるものがない。
 記憶に関するものや、自分たちの関係についての話はした。
 したけど――それで彼女があんな顔をする要因はなかった気がする。
 なんだ、何があった?
 今すぐにでも彼女のもとへ駆け寄りたい。
 けれど、彼女は誰かと通話中だ。
 あんな顔をさせている人間が許せないと思う反面、その人間の心当たりが全くない。
 遠目だが、彼女は泣いているような気がした。
 もういい、誰と通話中でもかまうものか。
 俺らしいっていうのは、きっとこういうことだ。
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