光のもとでⅠ
 祠にたどり着くと、結構寒かった。
 祠にしか陽があたっていないのだから当たり前か……。
 でも、なんとなくここへ足を向けちゃうんだよな。
 いつものように石に座り話しを続ける。
「期日に追われた仕事ってのはさ、あまりいいものじゃなかったりするんだよ。たまたま思いついたものを形にしてみた。そしたらいいものだった。父さんの仕事もそんなことが多い」
 それで今回のコンペに通ったなんて話は、いつ静にカミングアウトできるかわかったものではない。
 まさに、楽しいことだけを考えて碧と挑んだコンペであり、俺たちは見事ふたり揃って勝ち残ってしまったのだ。
「……父さんは、音楽も写真もインテリアも似たようなものだと思ってる。プロはそれをクリアできてこそプロだと思うんだ。でも、翠葉はプロじゃない。それを担ぎ出そうとしている静には、そこを配慮してくれって言った。静は仕事の鬼だからさぁ……下手したら翠葉のことだって追い詰めかねないと思って。ついつい釘刺しちゃったんだ」
 すると、上から手が伸びてきて携帯を奪われた。
< 4,290 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop