光のもとでⅠ
 なるほど、かけろってことかな。
 この近距離じゃさすがにまずいか……。
 立ち上がり、石に弁当を置くと静から三メートルほど離れて電話をかける。
「あ、秋斗くん?」
 彼は数コールで出た。
『失礼ですが、この携帯は静さんの携帯ですよね』
 そっかそっか、まずは名乗らねばならんかった。
 でも、察しのいい君ならわかるよね?
「あぁ、俺の携帯、今静に拉致られてるから静の携帯を借りたんだ」
 正しくは押し付けられたわけだけど、これはこれで間違っていないと思う。
『どうして携帯――』
 と、口にした次の瞬間には気づいたようだ。
 もしかしたら彼は翠葉のかなり近くにいるのかもしれない。
 でも、声の届かない場所……?
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