光のもとでⅠ
「きれいな景色が目の前にあるのに、撮れないんだとさ」
『スランプ……?』
「ははっ! そんな大そうなものじゃないよ。翠葉は『仕事』って言われて写真を撮ったことなんてないんだ。だから、写真を撮る前に『仕事』ってものを意識しすぎてるだけ。スランプよりはプレッシャーかな? それと、記憶がないってことが相当なストレスになってるんだろうね」
 身体症状には表れていないものの、「記憶喪失」というものがもたらすストレスの大きさは計り知れないと相馬先生から聞いた。
 失った直後はそれほどでもなかったのに、ここ最近はストレスの脈が強く出ていると聞いていた。
「あぁ、秋斗くんを責めているわけじゃないよ? 言っておくけど、俺、ネチネチ派じゃなくて、その場でザックリ派だから。もともと君のせいだなんて思ってないしね」
 彼は少し黙ったあと話しだした。
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