光のもとでⅠ
 君が言ったとおりだ。
 記憶をなくすというのは、経験値をすべて取り上げられたに等しい。
 取り戻せるのなら、それらすべてを取り戻してほしい。
 取り戻してあげたい。
 蒼樹――俺は、俺らしく彼女に接する。
 手を出すとか出さないとかそういうことではなく、ありのままの俺で――。
 びっくりさせたり赤面させたり、怖がらせたり。
 彼女の困った顔も好きだけど、そうではなくて……。
 ただ、ドキドキしてほしいんだ。
 俺に対して、ドキドキしてほしいんだよね。
 同じ轍を踏みに行くわけではなく、取り戻しにいくために――。

 携帯を取り出し蒼樹にかける。
『先輩、どうかしました?』
「蒼樹、あのさ……」
 蒼樹はどう思うだろうか。
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