光のもとでⅠ
「これ、いつもつけてるよね?」
 手を伸ばし、それに触れる。
 何気なく訊いたことだった。
 彼女に触れるきっかけがほしい。
 そのくらいにしか思っていなかった。
 だから、彼女からこんな言葉が返ってくるとは露ほども思いはしなかったんだ。
「これ、ツカサがインターハイに行ったときにお土産で買ってきてくれたんです」
 瞬時に嫉妬した。
 無意識だったと思う。
 気づけば、とんぼ玉を彼女の髪から外していた。
 緩く編まれていた髪の毛は徐々に解けていく。
「秋斗さんっ!?」
「司にもらったものだからずっと身につけていたの?」
 彼女に見えないようにとんぼ玉を握った。
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